オランダで怪我をしてしまった時に初診から治療まで完結できるフィジオセラピー(Fysiotherapie)を知っておこう
オランダに長く住んでいると、どうしても怪我や体の不調は避けられません。
私は最近まで、病気も怪我もすべてプライマリーケア「最初に対応する医療」のホームドクターに行くものと思っておりました。
しかし、実際には「スポーツ系の怪我や腰痛などの慢性的な痛み」などはホームドクターよりもフィジオセラピーのクリニックに通った方が良いケースがあるのです。
本日は、オランダで数名しかいない日本人フィジオセラピストをしている方に、詳しくフィジオセラピーについて聞いて来ましたのでご紹介します。
- フィジオセラピーとは
- どんな人がフィジオセラピーを利用しているのか
- どのような怪我の時にフィジオセラピーを利用するべきか
- フィジオセラピストはどんな治療をしているか
- 日本人フィジオセラピストのご紹介
- まとめ
フィジオセラピーとは
フィジオセラピーは日本では理学療法の事を指し、フィジオセラピストは理学療法士にあてはまります。
ちなみにフィジオセラピーはオランダ語で「Fysiotherapie」と書き、フィジオセラピストは「fysiotherapeut」と書きますが、街中のクリニックは単にフィジオ「fysio」と総称されており、クリニックの看板にもfysioとだけ書かれていることが多いです。
そんな理学療法士の日本での役割は、医師の指示に従い主に病院でのリハビリテーションなどをする職業で、普段は身近に接する機会が少ない職業です。
しかし、オランダのフィジオセラピストは、ホームドクターと同様にプライマリーケア(最初に対応する医療)の役割を担っています。
そのため、不調があった時に直接受診ができ、最初から最後までフィジオセラピストの診断と治療で完結することが可能です。
統計では、年間4人に1人はフィジオセラピーのクリニックを利用しており、補助健康保険の中で1番選ばれている保険ということが、数字にも表れています。
クリニックの多さや、統計から見てもオランダでは最も身近な医療のひとつといえるでしょう。
私の家の保険でもフィジオセラピーを選んでいます。
どんな人がフィジオセラピーを利用しているのか
実際に、どのような人がどんな時に利用しているのかを聞いてみました。
クリニックを利用される方の中で最も多いのは「首・肩の痛み」次に多いのが「腰痛、膝の痛み」に悩まれている方が多く利用されるようです。
他には、ジョギング中の痛みや「足首・膝の靭帯損傷、テニス肘」といったスポーツ関連の怪我で来院される方も多いということでした。
傾向として、フィジオセラピーを利用される方は、慢性的な体の痛みで悩んでいるか、スポーツに関連する怪我や痛みに悩んでいる方が多いということになります。
さらに、疼痛軽減のための鍼治療、疲労回復のためのスポーツマッサージ、マラソンのシーズンになるとパーソナルトレーニングなど幅広い需要もあるようです。
最初にお身体の不調が理由で来院されていない場合、保険適応外となるようです。
保険が適応されるかどうかは、事前に確認しましょう。
保険と料金について
オランダの保険ではフィジオセラピーをオプション(追加料金)として選ぶことができます。
オプションに追加していなければクリニックにかかる料金は自己負担となりますが、追加している場合は選んでいる通院回数分が保険の適応範囲となります。
ローカルの健康保険に加盟し、フィジオセラピーをオプションで追加した時の通院回数と金額の目安をご紹介します。
年間の通院回数により保険料金が変動し、安いプランで6回~9回、高いプランになると27回~32回を選べます。
保険プラン | 月額追加料金の目安 | 年間追加料金の目安 | 年間利用回数 |
---|---|---|---|
安いオプション | 7.25ユーロ | 87ユーロ | 6回~9回 |
高いオプション | 36ユーロ | 432ユーロ | 27回~32回 |
新年度ごと(毎年1月)に保険プランの見直しができるため、前年度の利用頻度を確認してプランを増やしたり減らしたりできます。
一度確定すると翌年のプラン変更時まではプランの切り替えはできません。
保険が適応されている方は、クリニックから保険会社へ請求し保険会社より直接クリニックへ支払われるため、お支払いなどの面倒な手続きも必要ありません。
我が家では、6回~9回のプランを追加しています。
駐在員の場合
駐在員の方は会社でご加入のパッケージにより多少違いがあるようですが、ホームドクターの紹介状が有るか・無いかで状況が変わるようです。
ホームドクターからの紹介状が無い場合は5回前後保険でカバーされ、紹介状が有ると12回もしくは無制限まで保険でカバーされる回数が増えます。
ホームドクターの紹介状 | 保険のカバー回数 |
---|---|
紹介状なし | 5回前後 |
紹介状あり | 12回もしくは無制限 |
1例では、12回使い切ってしまった後に再びホームドクターから紹介状をもらうと、さらに12回カバーされるので実質無制限となるケースが多いようです。
自己負担の料金
保険にフィジオを追加されてない方の自己負担費用は、クリニックによって違いがあるようですが、基本は初診約50ユーロ、2回目以降は約35ユーロです。
また、保険適用範囲の回数を超過すると次の診察からは自己負担となります。
通院回数 | 自己負担額 | 自己負担額累計 |
---|---|---|
初診 | 50ユーロ | |
2回 | 35ユーロ | 85ユーロ |
3回 | 35ユーロ | 120ユーロ |
このように自己負担だと通った回数分だけ診察料が加算されていくため、年間で3回以上クリニックに通うのであれば保険の安いオプションに加入をした方がお得です!
ちなみに、高いオプションは年間432ユーロと高額ですが、どれくらい使うとこの保険に価値が出てくるのか計算してみました。
純粋に自己負担だけで支払いをすると、12回クリニックに通うと支払い額が435ユーロになり、12回以上通うのなら高い保険を追加した方が良いと思えたのですが...
安いオプションプランの超過分を含めると85ユーロで6回の無料通院後、7回目以降から自己負担35ユーロを払い続けると、15回までは402ユーロで収まる計算になりました。
結果的には、年間16回以上クリニックを利用される方が、高いオプションプランを追加するとお得になるということがわかりました!
自己負担がお得なのは、2回以下の通院まで
安いオプションの保険がお得なのは、3回以上~15回以下の通院まで
高いオプションの保険がお得なのは、年間16回以上通院する場合
フィジオセラピーの保険は金額だけではなくオプションに追加しておくと、いざという時に無料で受診できるため、身体のちょっとした不調でも直ぐに相談に行けるようになり、完治までの時間が結果的に早くなるというメリットもあります。
どのような怪我の時にフィジオセラピーを利用するべきか
基本的に骨折や脱臼といった速やかな外科的処置が必要な場合は、ホームドクターもしくは病院の救急外来へ行きましょう。
自力で歩行ができるような怪我や、慢性的な痛みが伴う体の不調はフィジオセラピーで受診が可能です。
また、緊急性がない場合でも「早期発見早期治療」と言われるように、症状が我慢できなくなってから診察を受けるよりも、速やかに診察をしてもらうことが大切です。
理由としては、我慢できないほど痛みになると、患部が相当悪化している場合が多く、治療に時間がかかってしまうからです。
できるだけ症状が軽度なうちに治療することで、それだけ回復までの時間も短くなります。
フィジオセラピストはどんな治療をしているか
フィジオセラピーは基本的には、運動療法という方法で治療をし、必要と判断した場合は鍼治療をおこなうこともあります。
患者さんの症状によって治療方法や期間は異なりますが、エクササイズ・マッサージ・関節モビライゼーション・その他物理療法などをおこないます。
私が腰痛に悩み通院した際は、マッサージとモビライゼーションをしてもらい、自宅でもできるストレッチを教えてもらいました。
初診から3回程度の通院で、腰痛はしっかり改善されました。
日本人フィジオセラピストのご紹介
今回の記事を書くにあたって、私のサッカー仲間であり身体の不調が出るとお世話になっている、オランダで数名しかいない日本人フィジオセラピストの平出 康彦(ひらで やすひこ)さんにご協力いただきました。
実際に私が診察してもらった感想も交え、平出さんにしか無い魅力についてもご紹介します。
平出さんのプロフィール
平出 康彦(ひらで やすひこ)
2016年にオランダでフィジオセラピストの国家資格を取得。オランダサッカー界ではプロ1部リーグのユースチームや女子1部リーグのトップチームのメディカルスタッフを歴任。
さまざまなフィジオセラピークリニックで経験を積む中で、子どもからお年寄り、一般からスポーツ選手まで幅広く担当。
在蘭日本人の健康的なオランダライフを微力ながらサポートするために日々奮闘中。
フィジオセラピストとして働く傍ら、在蘭日本人サッカークラブJ-DREAMではコーチ活動も行っている。
日本語で診察を受けられる安心感
オランダには街中にフィジオセラピークリニックが沢山ありますが、数あるクリニックの中でも平出さんをご紹介する一番のポイントは日本語で対応していただけることです。
体の不調を母国語以外で説明するのは非常に難しいのですが、そこを日本語で意思の疎通をとれるという点で安心して相談することができます。
正規の診察だけでなくどんな小さな相談にも対応してくれますので受診しようか迷っている方や、ちょっとしたお身体の不調・お悩みを抱えている方は、平出さんに相談してみてください。
適切な診断をしてもらう重要性
早い回復のために最も大切なのは、間違った方向に進んでしまわないようにきちんとした診断をしてもらうことです。
日本ではフィジオセラピストが診断をすることはありませんが、オランダではその権限が与えられており、そのために国家試験を受け教育と経験を積んでいます。
私の妻がテニスで前十字靭帯を怪我した際は、初診でホームドクターへ行ったのですがフィジオセラピストのようにスポーツに関する怪我の専門家ではないため、初診から原因特定まで数か月もかかりました。
もしこの時に、初診をスポーツ系の怪我に専門知識がある平出さんのフィジオセラピークリニックに相談していたら、適正な診断を受けることであっという間に原因を特定できていたはず!
始めの原因特定が遅れるほど、完治までに時間がかかってしまうため、初診できちんとした診断をしてもらうことが非常に重要だと感じたエピソードです。
患者へのファーストのサービス
平出さんは、再発を予防しクリニックに依存することにならないように治療を行います。
たとえば、クリニック内の診察だけではなく自宅で行えるストレッチなどを指導することで、同じ個所の調子が悪くなった際に、患者さん自身が自分でストレッチをして悪化を防げるようにしています。
これぞ正に、クリニックに依存することなく自分でも調子を整えられるように考えてくれている、本当の意味での患者ファーストの治療です。
また、治療だけではなく細かい生活習慣や運動習慣も聞き取りながら、適切なアドバイスを並行して行ってくれます。
一つのやり方に固執することなく、常に患者さんにとって最善の選択を心がけサービスを提供している点でも信頼ができますね。
平出さんがいるクリニックの基本情報
クリニック名:Fysical Solutions
住所:Maalderij 35 1185ZC Amstelveen(ナビでお越しの際はMaalderij 33 とご入力ください)
駐車場:無料
クリニックはアムステルフェーンに位置しており、駐車場も広くて無料でご利用いただけます。
保険適応:可(ただし詳細はご加入のプランによります)
診察の他、体の不調など些細な相談にも対応してくれるので、先ずはお気軽にご連絡してみてください
まとめ
先述の保険適応についてですが、残念ながら保険が適応される事やプライマリーケアの権限があることをあまりご存じでない日本人の方も多く、せっかく保険も適応されるのですからぜひ使い倒していただきたいと思います。
痛みや怪我など、伝える事が難しい内容を日本語で相談できるのが一番のメリットですね。
怪我をしないことに越したことはありませんが、万が一怪我や痛みがある場合は、プライマリーケアを担っている、日本人フィジオセラピストの平出さんにぜひ相談してみてください。